趣味の毒草
   
           春爛漫を迎え、桜や桃の花の他、路傍に目をやるとヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリ、
          タンポポ等が咲き乱れております。身近な植物でも名称を知らない人が日本人には多い
          ようで、外国人留学生から代表的な野花を聞かれても、答えられなくて悲しい思いをした
          という学生の感想を、新聞の読者の声で見たことがあります。大根一本作れない日本人
          が殆んどでありながら、環境がどうのこうのと、うん蓄を垂れるのも滑稽だと思います。
           野に自生する可憐な植物には、気を付けないと毒が含まれているものがあります。
          トリカブトのように猛毒なアルカロイドを含む植物もあります。身近な植物から季節を追っ
          てご紹介して参りましょう。

                      
                           
ハシリドコロ(ナス科)花期4〜5月
                                
天龍村大河内にて

            
中毒を起こすと瞳孔が開き、気が狂ったように走り回ることからその名があるようで、地方によ
        ってはキチガイイモ、キチガイナスビと呼ばれているようです。アトロピン、ヒヨスチアミンの毒成分
        を持ち、粘膜や皮膚からも吸収される恐ろしい毒で、トリカブトに次ぐ猛毒性を持つ植物と言う専
        門家もいるようです。地中から出た芽がフキノトウに間違われたり、葉が瑞々しく食べられそうで
        あるためテンプラにして中毒を起こした例も報告されております。根茎を乾燥させたものを「ロート」
        根と呼び生薬として使われ、眼科医療・消化器系医療薬に使われております。ロート製薬の名の
        由来はここから来たという説があるようですが、同社の井上豊太郎博士がドイツに留学中、目薬
        の処方箋を伝授した恩師のロートムンド博士の名称からとったのが本当の由来だということです。
        渓流釣りをやる人なら1度は見たことがあると思います。谷合いの日陰に自生しております。

          
          ムラサキケマン(ケシ科)花期4〜5月     ミヤマキケマン(ケシ科)4〜5月
                    自宅前にて                      飯田市南信濃にて

        ムラサキケマン、キケマンも色でそう呼ばれているようです。葉がニンジンの葉に似ているため
        若芽はヤマニンジンと間違いやすいが、折ると嫌な臭いを放つため区別出来ます。プロトピン等
        の毒があり、誤食すると痙攣(けいれん)を起こし、心筋停止になる場合もあるようです。よく見か
        ける植物ですので覚えておきましょう。

                    
                     
スイセン(ヒガンバナ科)早春から春
                        
   自宅庭にて  25.4,20

            
スイセンが?と思われるでしょうが、葉と球根にアルカロイドを含み、葉はニラ、球根は玉ねぎ
        と間違い易く、死亡例は近年無いようですが、過去に何例も誤食事故が起きております。

          
          クサノオウ(ケシ科) 花期 4〜5月         茎を折ると黄色い液が出る
       
         
タムシなどの皮膚病に治癒効果があるようです。中国ではその昔、干してアヘンの代用
         とした時代があったようです。ケリドニンというアルカロイドを含む毒性の強い植物です。
         4月〜5月頃、田んぼの土手でよく見かけます。

             
                バイケイソウ(ユリ科)    ギボウシ(ユリ科)若芽は食用 花期7月
                 
大鹿村鳥倉林道にて 18.5.20

           
里で見かけることはありませんが、山地の沢沿いや湿地に群生します。 山岳地帯のお
         花畑には近縁種のコバイケイソウがあり、中央アルプス千畳敷は宝庫です。若芽は食用
         のギボウシの若芽に似ている事から誤食による中毒が毎年あるようです。ギボウシを食
         べる習慣は飯田地方には無いため事故のニュースを聞きませんが、北信や山梨県で発
         生しております。全草に毒を持つが特に根茎に強いアルカロイドを含みます。葉の天ぷら
         2〜5枚でも嘔吐、手足の痺れの症状が起こるようです。

          
           
タケニグサ(ケシ科)              茎を折るとオレンジ色の液が出る
           
        
子供の頃この茎から出た液がヨードチンキのようだったため、ヨーチンの木と呼んだ。
        皮膚の弱い人はかぶれます。昔、せんじ汁を害虫駆除に用いた地方もあるようです。

       
クサノオウと同じくタムシに効くそうです。飯田地方でもイボの薬として使ったようです。

          
         
マムシグサ(テンナンショウ)花期4〜6月    秋になると赤い実がなる
                   (サトイモ科)

         全体に不溶性シュウ酸塩を含み、針状の結晶が痛みを引き起こす。
         最近はコブラリリーという名で園芸店で売られているそうです。
        

          
        
キンポウゲ(ウマノアシガタ)(キンポウゲ科)  八重キンポウゲ(園芸種)花期5〜6月
        
         
キンポウゲは田んぼの土手によく生えております。花びらが散った後にコンペイトウの
        ような種子ができます。小学生の時 学級でウサギを飼育していて、ガキ大将だったY君
        がたまたま日曜日に飼育当番が当たってしまい、私の家に寄って草を持って行きました。
        当時我が家ではアンゴラ兎を10羽程飼っていました。持って行った草の中にキンポウゲ
        が混ざっていて、Y君が与えたところ旨そうに兎が食べました。その話を翌日の帰り道で
        Y君が面白く話したのでした。ところが、2、3日後にウサギが死んだのです。帰り道に話
        ていたのを同級生のY子が担任にタレこみY君は大目玉を食らったのでした。 幸い私は
        一緒に餌をやったのに、Y君だけが担任に呼ばれました。そんなY君は現在大手製薬会
        社の研究室で活躍されております。 アネモニンという有毒成分を含み腹痛、痙攣を引き
        起こすようです。      

            
          ミヤマトリカブト(キンポウゲ科)    正しくはキタザワブシか?  16.7.24
                  八方尾根にて18.10.1         燕山荘直下にて(小屋の方がトリカブトの仲間と言ってた)
                  
           
毒草の代表格です。花はきれいな群青色で、7月頃に咲いているものもあり、種類が
         多く日本だけで約30種類もあり、どれもよく似ているため分類は難しいようです。 群落
         を作り南アの塩見岳へ行く途中の権右衛門山一帯は見事です。根に強力なアルカロイド
         を含み殺人事件や時代劇にもこの毒で暗殺するシーンがあるため、 悪用を恐れ学名の
         「アコニタム」という名で園芸店で売られている所もあるようです。



                       
                        ヨウシュヤマゴボウ(ヤマゴボウ科)

         ヤマゴボウという名前から漬物などにある山ゴボウと誤解されている方がいますが、
         食用の山ゴボウはキク科のモリアザミの根です。ヨウシュヤマゴボウはまったく別の植
         物で、明治時代にアメリカから渡来した帰化植物です。根に硝酸カリを含み、秋深まる
         頃に濃い紫色の果実を付けます。 一見すると美味しそうな果実ですが中毒を起こした
         例が多々あるようですので注意が必要です。最近の研究で根からヒトリンパ球に作用
         するレクチンというタンパクが発見され、免疫作用で活躍するT細胞とB細胞に特異的
         に働き、選択毒性を持っている事が判明し、その特性を利用してガンやエイズに冒され
         た細胞だけを選択して治療する新薬開発の可能性も出てきているようです。
 
              
  
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